この記事でわかること
- 粉体搬送設備の能力を決めるときに必要な情報
- 「1時間に何kg運びたいか」だけでは決められない理由
- 搬送物の粒径・かさ密度・水分による違い
- 搬送距離・高低差・曲がりが能力へ与える影響
- コンプレッサー能力を確認する理由
- ジェクターの機種を選定するときの考え方
- 実際の材料による搬送テストが重要な理由
はじめに
粉体・粒体搬送設備を導入するとき、
「1時間に1トン運びたいので、1t/hの設備を選べばよい」
と考えてしまうことがあります。
しかし、粉体搬送設備の能力は、単純な「kg/h」だけでは決められません。
実際には、
何を運ぶのか
↓
どこからどこまで運ぶのか
↓
どのくらいの時間で運ぶのか
↓
どのような経路を通すのか
↓
どの程度の圧縮空気を使用できるのか
まで確認する必要があります。
同じ1t/hでも、
砂を水平10m搬送する場合
と、
軽量な粉体を垂直30m上の設備へ投入する場合
では条件が異なります。
この記事では、粉体・粒体搬送設備の能力を決める際に確認したいポイントと、空気搬送機「ジェクター」の機種選定について解説します。
実際のジェクターによるPKS回収・搬送動画
タンカー船内|PKS(ヤシ殻)回収・搬送作業
→ タンカー船内に残ったPKSをジェクターで吸引し、ホースを通して搬送している実際の作業事例です。
ジェクターは、お手持ちのコンプレッサー(圧縮空気)と接続するだけで、吸引・搬送・投入・排出(散布)を1台で行える空気搬送機です。
内部はシンプルなストレート構造で、モーターや回転機構などの駆動部を持ちません。
そのため、
- 床や設備下から吸引する
- ホッパーやフレコンから材料を取り出す
- 離れた場所へ搬送する
- 高所の設備へ投入する
- 回収場所へ排出する
といった用途を検討できます。
ただし、必要なジェクターの能力・機種は現場条件によって変わります。
粉体搬送設備の能力は「搬送量」だけでは決められない
設備選定で最初に確認されることが多いのが、
「1時間に何kg搬送したいか」
という必要搬送量です。
もちろん重要な条件ですが、それだけでは設備を選定できません。
例えば、同じ500kg/hでも、
条件A
- 乾燥した砂
- 水平10m
- 高低差なし
- 曲がりが少ない
条件B
- 湿った粉体
- 水平80m
- 高低差20m
- 曲がりが多い
では搬送条件が大きく異なります。
そのため設備能力は、
搬送量 × 搬送物 × 搬送経路 × 圧縮空気
を組み合わせて考える必要があります。
ポイント1.何を搬送するのか
最初に確認するのが搬送物です。
同じジェクターでも、材料によって搬送状態は異なります。
確認したいのは、
- 材料名
- 粉体か粒体か
- 最大粒径
- 粒径分布
- かさ密度
- 水分
- 粘着性
- 固結の有無
- 摩耗性
などです。
「粉体です」という情報だけではなく、できるだけ具体的な材料状態を確認します。
ポイント2.最大粒径を確認する
粉体・粒体の搬送では、平均粒径だけでなく最大粒径も重要です。
例えば、
「普段は5mm程度だが、20mm程度の塊が混ざる」
という場合には、その塊まで考慮する必要があります。
特に、
- 砕石
- 石炭
- コークス
- 木質材料
- ブラスト材
- 工程残渣
などでは、粒径にばらつきがある場合があります。
設備選定時には、通常粒径と最大粒径の両方を確認します。
ポイント3.かさ密度を確認する
同じ体積でも、材料によって重量は大きく異なります。
例えば、
1m³の軽量物
と、
1m³の砂状材料
では重量が異なります。
そのため「何m³搬送できるか」と「何kg搬送できるか」は同じ意味ではありません。
必要搬送量を重量で検討する場合には、材料のかさ密度を確認します。
ポイント4.水分・付着性を確認する
同じ材料でも、水分によって搬送状態が大きく変化する場合があります。
乾燥した粉体では搬送できても、
- 湿っている
- 粘着性がある
- 塊になっている
- ホース内壁へ付着する
といった状態では条件が厳しくなる場合があります。
特に、
乾燥時には問題なく流れるが、雨天後には固まる
といった材料では、最も厳しい状態を想定して設備を検討することが重要です。
ポイント5.必要搬送量を確認する
次に、
どのくらいの量を、どのくらいの時間で搬送したいのか
を確認します。
例えば、
1日5トン搬送する
という条件だけでは十分ではありません。
ケースA
8時間で5トン
ケースB
1時間で5トン
では必要な瞬間能力が大きく異なります。
そのため、
- 1回の搬送量
- 1日の搬送量
- 希望する搬送時間
- 連続運転か間欠運転か
- 1日に何回搬送するか
まで整理します。
「現在どのように運んでいるか」も重要
新しい設備を選定するときには、現在の作業方法も重要な情報です。
例えば、
フレコンから材料を出す
↓
一輪車へ入れる
↓
20m運ぶ
↓
作業員がホッパーへ投入
という工程なら、
単に「搬送設備を導入する」のではなく、
フレコンから直接吸引
↓
ジェクターで搬送
↓
ホッパーへ直接投入
という工程へ変更できる可能性があります。
この場合、設備能力だけでなく、
中間運搬そのものを減らせないか
という視点で検討します。
ポイント6.吸引距離を確認する
ジェクターでは、吸引側の距離が重要です。
基本的には、
吸引側をできるだけ短くし、長距離部分を排出側へ取る
構成を推奨しています。
吸引側は5m程度を推奨しています。
現場条件によって10m前後で使用される場合もありますが、吸引距離が長くなるほど条件は厳しくなります。
そのため、
ジェクターを材料の近くへ設置できるか
も設備レイアウトを考える際の重要なポイントです。
ポイント7.排出側の搬送距離を確認する
材料を吸引したあと、どこまで運ぶのかを確認します。
例えば、
- 10m先のフレコン
- 50m先のホッパー
- 建屋外の回収場所
- 別工程の設備
- 高所にある投入口
などです。
条件が合えば、ジェクターでは排出側で水平約200m程度の搬送を検討できる場合があります。
ただし、200mはすべての材料で保証される数値ではありません。
材料や必要搬送量、ホース径、コンプレッサーなどによって条件は変わります。
ポイント8.高低差を確認する
搬送距離だけでなく、高低差も確認します。
例えば、
水平30m
と、
30m上の設備へ垂直搬送
では条件が異なります。
条件によってはジェクターで垂直約100m程度の搬送を検討できる場合があります。
ただし、
- 材料
- 粒径
- かさ密度
- 水分
- 搬送量
- ホース径
- 曲がり
- コンプレッサー能力
などによって変化します。
「総延長50m」だけではなく、水平距離と高低差を分けて確認することが重要です。
ポイント9.曲がり数を確認する
搬送距離が同じでも、ホースや配管の曲がり数によって条件は変わります。
例えば、
直線50m
と、
90度の曲がりが複数ある50m
では搬送抵抗が異なります。
特に固定配管へ組み込む場合には、
- 曲がり数
- 曲がり角度
- 配管径
- 配管レイアウト
まで確認します。
可能であれば不要な曲がりを減らした方が、搬送条件を整えやすくなります。
ポイント10.コンプレッサー能力を確認する
ジェクターは圧縮空気を動力として使用します。
そのため機種選定では、
使用できるコンプレッサー
も重要です。
確認したいのは、
- コンプレッサー容量
- 圧力
- 空気量
- エアー配管径
- コンプレッサーからジェクターまでの距離
- 他設備との共用状況
などです。
工場に既設のコンプレッサーがあり、必要な圧力・空気量を確保できる場合には、その圧縮空気を利用できる場合があります。
「コンプレッサーがある=使える」とは限らない
例えば大型コンプレッサーを設置していても、
- 他設備が大量にエアーを使用している
- ジェクターまでの配管が細い
- 配管距離が長い
- エアー漏れがある
場合には、必要な圧縮空気をジェクターまで供給できない可能性があります。
そのため、コンプレッサー本体の仕様だけではなく、
実際の使用環境まで含めて確認すること
が重要です。
ポイント11.排出先を確認する
搬送設備を考える際には、
「どこから吸うか」だけでなく「どこへ出すか」
も重要です。
例えば、
- フレコンバッグ
- オープン容器
- ホッパー
- サイロ
- 反応槽
- 集粉設備
などです。
ジェクターでは材料と一緒に搬送空気も排出されるため、排出先では空気をどのように処理するかも確認します。
特に密閉設備へ投入する場合には、設備側の圧力や排気条件を含めた検討が必要です。
微粉体ならジェクロンの併用も検討する
細かな粉体では、排出時に粉じんが発生しやすくなります。
その場合には、
ジェクターで吸引・搬送
↓
ジェクロンで集粉
↓
フレコンなどへ回収
という設備構成を検討できます。
集粉機「ジェクロン」はサイクロン方式の粉体回収設備で、
- 高性能集じんフィルター
- インバーターによる風量調整
- パルスエアーによる自動逆洗
などの機能があります。
設備選定では、搬送能力だけでなく排出後の粉じん処理まで含めて考えることが重要です。
固結物がある場合はエアースコップとの組み合わせも検討する
ホッパーやサイロ内で材料が固結している場合、ジェクターの機種を大きくするだけでは解決しない場合があります。
例えば、
材料が固結
↓
吸引口まで流れてこない
↓
ジェクターが材料を吸えない
という状態です。
この場合には、
エアースコップで固結物を崩す
↓
ジェクターで吸引
↓
回収場所まで搬送
という方法を検討できます。
重要なのは、搬送設備だけでなく、その前後工程まで確認することです。
摩耗性の高い材料では耐摩耗対策も確認する
砂・ブラスト材・砕石などを搬送する場合には、搬送能力だけでなく摩耗も考慮します。
ジェクターでは、排出部が最も摩耗しやすい部分です。
摩耗対策として、排出部へ接続するセラミック補強耐摩耗ホースを使用する方法があります。
ただし、摩耗の程度は、
- 材料
- 粒径
- 搬送量
- 搬送速度
- 使用時間
- 曲がり数
などによって変化します。
長期間使用する設備では、ランニングコストや交換頻度まで含めて検討します。
ポイント12.設備を固定するのか移動して使うのか
同じ粉体搬送でも、
生産ラインへ常設する
場合と、
必要な場所へ移動して使用する
場合では適した構成が異なります。
固定設備として使う場合
- 配管レイアウトを決めやすい
- 吸引・排出位置を固定できる
- 作業工程へ組み込みやすい
移動して使う場合
- 複数箇所の回収に使用できる
- 設備下や床面清掃にも使いやすい
- 現場ごとにホースを取り回せる
ジェクターは用途に応じて、固定設備への組み込みと移動使用の両方を検討できます。
既存設備へ後付けできる場合もある
粉体搬送設備を導入するからといって、既存設備をすべて交換する必要があるとは限りません。
設備の構造によっては、
- フランジ
- ニップル
- ボールジョイント
- 各種継手
などを使用して既存設備へ接続できます。
例えば、
既存ホッパー
↓
ジェクター
↓
既存配管
↓
次工程
といった構成も検討できます。
現在使用している設備を活かせれば、必要な工程だけを改善できる可能性があります。
大きな機種を選べばよいとは限らない
設備選定では、
「余裕を持って一番大きな機種を選ぼう」
と考えることがあります。
しかし、必ずしも大型機種が適しているとは限りません。
大型機種になるほど必要な圧縮空気量も変わるため、
ジェクターだけ大型化
↓
既設コンプレッサーでは必要な空気量を供給できない
ということも考えられます。
また、実際に必要な搬送量が少なければ、過剰な設備になる可能性もあります。
重要なのは、
必要搬送量と現場条件に合った機種を選ぶこと
です。
能力には余裕を持たせる
一方で、必要搬送量ぎりぎりで設備を選定することにも注意が必要です。
実際の現場では、
- 材料水分の変化
- 粒径のばらつき
- ホースレイアウトの変化
- コンプレッサー使用状況
- 材料供給状態
などによって搬送量が変化する場合があります。
そのため、実際の運用条件を確認したうえで、必要な処理量を確保できる設備構成を検討します。
設備選定前に整理しておきたい情報
お問い合わせの際には、次の情報があると設備を検討しやすくなります。
搬送物
- 材料名
- 粒径
- 最大粒径
- かさ密度
- 水分
- 固結・粘着性
- 摩耗性
搬送条件
- 吸引距離
- 排出距離
- 高低差
- 曲がり数
- 希望するホース径
- 吸引元
- 排出先
必要能力
- 1回の搬送量
- 1日の搬送量
- 希望搬送時間
- 運転頻度
圧縮空気
- コンプレッサー容量
- 圧力
- 空気量
- 他設備との共用状況
すべての条件が最初から決まっている必要はありません。
分かる範囲の情報や現場写真・動画などから確認を進めることもできます。
現場写真・動画があると検討しやすい
設備選定では数値だけでは分からない情報もあります。
例えば、
- ホッパーの形状
- 作業スペース
- ホースを通せる場所
- 障害物
- 設備の高さ
- 現在の作業方法
などです。
そのため現場写真や動画があれば、
どこへジェクターを設置するか
どのようにホースを通すか
どこへ排出するか
を検討しやすくなります。
最終的には実際の材料で搬送テストを行う
粉体・粒体は、仕様書の数値だけでは実際の搬送状態を判断しにくい場合があります。
特に、
- 湿っている
- 粘着性がある
- 粒径にばらつきがある
- 割れや欠けが心配
- 必要搬送量が大きい
- 長距離搬送したい
- 高所へ搬送したい
といった条件では、実際の材料による搬送テストが有効です。
搬送テストでは、
- 搬送できるか
- どの程度の搬送量になるか
- どの機種が適しているか
- ホースへ付着しないか
- 材料状態が変化しないか
- 必要なコンプレッサー条件
などを確認します。
「搬送できる」と「必要能力を満たす」は別
設備選定で特に重要なのが、この違いです。
例えば、
材料がホースを通って排出先まで届いた
としても、
必要量が1,000kg/hなのに、
実際には200kg/hしか搬送できない
のであれば、目的を満たしているとは言えません。
そのため搬送テストでは、
搬送可否だけでなく時間当たりの搬送量まで確認すること
が重要です。
ジェクターの機種選定は現場条件から考える
ジェクターには複数の機種があります。
機種選定では、
材料
+粒径
+必要搬送量
+搬送距離
+高低差
+搬送経路
+コンプレッサー
を総合的に確認します。
単純に、
「この材料ならこの機種」
と決められるわけではありません。
同じ材料でも、
10m搬送する現場
と、
100m搬送する現場
では必要条件が異なる可能性があります。
よくある質問
粉体搬送設備は搬送量だけで選べますか?
搬送量だけでは判断できません。
材料の粒径・かさ密度・水分、搬送距離、高低差、曲がり、コンプレッサー条件などを含めて検討します。
既設コンプレッサーを使用できますか?
必要な圧力・空気量を確保できれば、既設の圧縮空気を利用できる場合があります。
コンプレッサー本体だけでなく、配管径や他設備との共用状況も確認します。
長距離でも搬送できますか?
条件によっては、ジェクターでは排出側で水平約200m程度の搬送を検討できる場合があります。
ただし、材料や必要搬送量などによって条件は変化します。
高所のホッパーへ投入できますか?
条件によっては垂直約100m程度の搬送を検討できる場合があります。
実際には高低差、搬送物、ホース径、曲がり、必要搬送量などから判断します。
どの機種が適しているか分からなくても問い合わせできますか?
問題ありません。
搬送物、距離、高低差、必要搬送量、コンプレッサー条件など、分かる範囲の情報から設備構成を検討できます。
実際に搬送できるか確認できますか?
材料によっては、実際の搬送物を使った搬送テストをおすすめしています。
搬送可否だけでなく、搬送量や必要機種を確認するためにも有効です。
まとめ
粉体搬送設備の能力は、
「1時間に何kg運びたいか」だけでは決まりません。
設備選定では、
- 搬送物
- 最大粒径
- かさ密度
- 水分・付着性
- 必要搬送量
- 吸引距離
- 排出距離
- 高低差
- 曲がり数
- コンプレッサー
- 排出先
- 使用方法
などを総合的に確認します。
空気搬送機「ジェクター」は、お手持ちのコンプレッサー(圧縮空気)と接続するだけで、吸引・搬送・投入・排出(散布)を1台で行える空気搬送機です。
内部はシンプルなストレート構造で駆動部を持ちません。
設備導入や設備改善をご検討中の方は、お気軽にお問い合わせください。
搬送物・搬送距離・高低差・必要搬送量・コンプレッサー条件などを確認し、現場に適した機種・ホース構成・回収方法をご提案します。実際の材料による搬送テストについてもご相談いただけます。
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