この記事でわかること
- 粉体・粒体はどのくらいの距離まで搬送できるのか
- 搬送距離だけでは搬送可否を判断できない理由
- 水平搬送と垂直搬送で確認したいポイント
- 長距離搬送で重要になるコンプレッサー・配管条件
- ジェクターで長距離・高所搬送する際の考え方
- 搬送設備を選ぶ前に確認したい現場条件
はじめに
粉体・粒体の搬送設備を検討していると、
「50m先まで搬送できますか?」
「100m以上離れた場所へ送りたい」
「地上から高所の設備まで持ち上げたい」
「工場の端から端まで原料を搬送したい」
といった疑問が出てきます。
粉体・粒体の搬送では、搬送距離は設備選定における重要な条件の一つです。
しかし、
「100m以内なら搬送できる」
といったように、距離だけで搬送可否を判断することはできません。
実際には、
- 搬送物
- 粒径
- 比重・かさ密度
- 水分
- 必要搬送量
- 水平距離
- 高低差
- 配管・ホース径
- 曲がりの数
- コンプレッサー能力
などを総合的に確認する必要があります。
この記事では、粉体・粒体を長距離・高所へ搬送するときの考え方と、空気搬送機「ジェクター」を使った搬送方法について解説します。
実際のジェクターによる長距離搬送事例
まずは、実際にジェクターを使用して粉粒体を搬送している様子をご覧ください。
タンカー船内でのPKS(ヤシ殻)回収・搬送
→ タンカー船内に残ったPKS(ヤシ殻)をジェクターで吸引し、ホースを通して搬送している実際の作業動画です。
ジェクターは、お手持ちのコンプレッサー(圧縮空気)と接続するだけで、吸引・搬送・投入・排出(散布)を1台で行える空気搬送機です。
本体内部はシンプルなストレート構造で、モーターなどの駆動部を持ちません。
ホース・配管を延長することで、
材料を吸引する場所
↓
ジェクター
↓
長距離のホース・配管
↓
目的の排出場所
という搬送ラインを構成できます。
ジェクターでは、条件が合えば排出側で水平約200m、垂直約100m以上の搬送を検討できる場合があります。
ただし、これはすべての粉体・粒体を200m・100m搬送できるという意味ではありません。
搬送能力は対象物や設備条件によって大きく変わります。
粉体・粒体は何mまで搬送できる?
粉体・粒体の搬送距離について、
「何mまで搬送できますか?」
というご質問をいただくことがあります。
しかし、実際には距離だけでは判断できません。
例えば同じ50mでも、
水平50m
と、
水平30m+垂直20m
では必要な搬送条件が異なります。
さらに、
直線50m
と、
エルボが何か所もある50m
でも搬送条件は変わります。
そのため搬送設備を検討する際は、単純な距離ではなく、搬送ルート全体を見ることが重要です。
搬送距離に影響する主な条件
1.搬送物の比重・かさ密度
材料の重さは搬送能力に影響します。
例えば、
- 木質ペレット
- PKS
- ウッドチップ
のような比較的軽量な材料と、
などでは必要な搬送条件が異なります。
材料名だけではなく、実際のかさ密度や比重を確認することが重要です。
2.粒径・粒度分布
粒径も搬送性を左右します。
細かな粉体と比較的大きな粒体では、空気中での動き方が異なります。
また、
「平均粒径は小さいが、大きな塊が混ざっている」
という場合には、その最大粒径も確認する必要があります。
搬送可否を判断する場合は、平均粒径だけではなく、
- 最大粒径
- 粒度分布
- 塊の有無
- 異物の有無
なども確認します。
3.水分・付着性
同じ材料でも、水分量によって搬送性が大きく変化する場合があります。
乾燥状態では問題なく搬送できても、水分を含むことで、
といった現象が起こる場合があります。
そのため湿った粉体・粒体では、材料名だけでなく実際の含水状態を確認することが重要です。
4.必要搬送量
「搬送できるか」と「必要な量を搬送できるか」は別の問題です。
例えば100m先まで材料が到達しても、必要な処理量を確保できなければ実用的とはいえません。
設備選定では、
- 1時間あたり何kg必要か
- 1日に何t処理するか
- 何時間以内に作業を終えたいか
なども確認します。
5.ホース・配管径
ホースや配管の内径も搬送能力に関係します。
対象物の粒径や必要搬送量に対して適切な径を選ぶ必要があります。
単純に太い配管にすればよいわけではなく、コンプレッサー能力や必要な空気速度などを含めて設備構成を検討します。
6.曲がり・エルボ
長距離搬送では、配管の曲がりも重要です。
材料が曲がり部分を通過するときには抵抗が生じます。
そのため、
直線100m
と、
複数の曲がりを含む100m
では搬送条件が異なります。
設備レイアウトを検討する際は、できるだけ不要な曲がりを減らし、搬送ルートをシンプルにすることがポイントです。
7.コンプレッサー能力
ジェクターは圧縮空気を利用して粉体・粒体を搬送します。
そのため、
- 使用圧力
- 必要空気量
- コンプレッサー容量
- 他設備によるエアー使用量
- 配管による圧力損失
などを確認する必要があります。
工場に既設コンプレッサーがある場合も、必要な圧力・空気量を確保できる条件であれば利用できる場合があります。
長距離搬送では「吸引側」と「排出側」を分けて考える
ジェクターで長距離搬送を検討するときに重要なのが、
吸引距離と排出距離を同じように考えないこと
です。
ジェクターでは基本的に、
吸引側を短くして、長距離部分を排出側にする
構成を推奨しています。
例えば100m離れた場所へ材料を運びたい場合、
材料
↓
吸引ホース5m
↓
ジェクター
↓
排出ホース・配管95m
↓
回収場所
といった考え方です。
吸引側は5m程度を推奨していますが、現場条件によっては10m前後で使用されるケースもあります。
ジェクター本体をできるだけ材料の近くへ設置し、吸引後の長距離部分を排出側で確保することがポイントです。
水平200m程度の長距離搬送
対象物や設備条件が合えば、ジェクターでは排出側で水平約200m程度の搬送を検討できる場合があります。
例えば、
- 工場内の離れた設備まで搬送したい
- 回収場所を1か所へ集約したい
- コンベア下から離れた場所へ材料を送りたい
- 重機が入れる場所まで材料を搬出したい
- 屋外の回収設備まで搬送したい
といったケースです。
ただし、200mは保証値ではありません。
材料の性状や必要搬送量、配管径、曲がり、コンプレッサー能力などによって搬送できる距離は変わります。
垂直100m程度の高所搬送
ジェクターでは、条件が合えば垂直約100m程度の搬送を検討できる場合があります。
例えば、
- 地上から高所のホッパーへ投入する
- 地下・ピットから地上へ搬出する
- 高低差のある工場内で搬送する
- プラント設備の上部へ材料を送る
といった用途です。
ただし、垂直搬送では材料を持ち上げる必要があるため、水平搬送と同じ条件ではありません。
実際には、
水平距離+高低差+曲がり+対象物+必要搬送量
をまとめて確認します。
長距離搬送ならコンベアが不要になる?
現場によっては、空気搬送によってコンベアや人力運搬を置き換えられる場合があります。
例えば、
回収
↓
一輪車へ積む
↓
人が運ぶ
↓
別設備へ投入
という工程を、
ジェクターで吸引
↓
ホース・配管で長距離搬送
↓
目的地へ直接排出
という工程へ変更できる可能性があります。
一方で、大量の材料を常時連続搬送する用途では、ベルトコンベアやスクリューコンベアなどが適している場合もあります。
重要なのは、
「長距離搬送できるからジェクターを選ぶ」のではなく、現在の作業工程をどこまで減らせるか
という視点で設備を比較することです。
既存設備へ後付けして長距離搬送する方法も
ジェクターは、既存の製造設備や回収設備と組み合わせる方法も検討できます。
例えば、
既存設備
↓
ジェクター
↓
長距離配管
↓
ホッパー・サイロ・回収設備
といった構成です。
設備条件に応じて、
- フランジ
- ニップル
- ボールジョイント
- ホース
- 配管
などを使用して接続します。
既存設備をすべて入れ替えるのではなく、人力運搬が残っている区間だけを空気搬送へ変更する方法も考えられます。
摩耗性の高い材料を長距離搬送する場合
砂・ブラスト材・砕石など摩耗性の高い材料では、搬送距離が長くなるほどホースや配管の摩耗についても確認する必要があります。
ジェクターでは、特に排出部が最も摩耗しやすい部分です。
摩耗対策として、排出部へ接続するセラミック補強耐摩耗ホースを使用する方法があります。
さらに長距離搬送では、
- 曲がり部分
- 材料が衝突しやすい場所
- ホース・配管の接続部
なども確認します。
対象物の摩耗性を考慮して、ホースや配管仕様を選定することが重要です。
微粉体では排出側のエアー処理も確認
長距離搬送では、目的地へ材料を届けることだけでなく、排出側で搬送エアーをどう処理するかも重要です。
特に微粉体では、開放状態で排出すると粉じんが発生する可能性があります。
その場合、ジェクターとサイクロン式集粉機「ジェクロン」を組み合わせ、
ジェクターで搬送
↓
ジェクロンへ投入
↓
材料と空気を分離
↓
粉体を回収
という構成も検討できます。

搬送距離だけで機種を選ばない
ジェクターには複数の機種がありますが、
「距離が長いから大型機」
と単純に決められるわけではありません。
確認したいのは、
- 何を搬送するのか
- どれくらいの量を搬送するのか
- 吸引距離は何mか
- 排出距離は何mか
- 高低差は何mか
- 曲がりはいくつあるか
- 使用できるコンプレッサーは何か
といった条件です。
必要以上に大きな設備を選ぶのではなく、現場条件に合った機種・ホース径・コンプレッサーを組み合わせることが重要です。
導入前に確認しておきたい情報
長距離・高所搬送をご検討の場合、次のような情報があると設備構成を検討しやすくなります。
搬送物
- 材料名
- 最大粒径
- かさ密度・比重
- 水分
- 付着性
- 摩耗性
搬送能力
- 1時間あたりの必要搬送量
- 1日あたりの処理量
- 希望する作業時間
搬送ルート
- 吸引距離
- 排出側の水平距離
- 高低差
- 曲がりの数
- 配管・ホース径
エアー条件
- コンプレッサーの種類
- 圧力
- 空気量
- 既設エアーを使用する場合は他設備の使用状況
正確な図面がなくても、現場写真・対象物・おおよその距離と高低差が分かれば、初期検討の材料になります。
実際の搬送物でテストすることが重要
粉体・粒体の空気搬送では、計算だけでは判断しにくい条件があります。
特に、
- 長距離搬送
- 高所搬送
- 湿った材料
- 付着性のある材料
- 摩耗性の高い材料
- 必要搬送量が決まっている場合
などでは、実際の対象物を使った搬送テストが有効です。
エコ・ワークでは、実際の現場条件に応じたジェクターの搬送テストについてもご相談いただけます。
設備導入や設備改善をご検討中の方は、お気軽にお問い合わせください。
対象物・必要搬送量・吸引距離・排出距離・高低差・曲がり・コンプレッサー条件などを確認し、現場に適した機種や設備構成をご提案します。
よくある質問
粉体・粒体は200m搬送できますか?
対象物や設備条件が合えば、ジェクターでは排出側で水平約200m程度の搬送を検討できる場合があります。
ただし、200mは保証値ではありません。
対象物、必要搬送量、高低差、曲がり、配管径、コンプレッサー能力などによって変わります。
100m上まで搬送できますか?
条件が合えば垂直約100m程度の搬送を検討できる場合があります。
ただし、水平距離や対象物、必要搬送量なども含めて判断する必要があります。
吸引ホースを100m伸ばすことはできますか?
ジェクターでは、吸引側を長くするのではなく、吸引側をできるだけ短くして長距離部分を排出側に取る構成が基本です。
吸引側は5m程度を推奨しています。
曲がりが多くても搬送できますか?
曲がりが増えるほど搬送抵抗が大きくなるため、搬送能力に影響します。
距離だけでなく、曲がりの数や角度を含めて搬送ルートを確認します。
工場の既設コンプレッサーを利用できますか?
必要な圧力・空気量を確保できれば利用できる場合があります。
既設コンプレッサーの仕様や他設備でのエアー使用状況を確認したうえで判断します。
まとめ
粉体・粒体をどこまで搬送できるかは、距離だけでは決まりません。
搬送設備を検討する際には、
- 搬送物
- 粒径
- 比重・かさ密度
- 水分
- 必要搬送量
- 吸引距離
- 排出距離
- 高低差
- 曲がり
- 配管・ホース径
- コンプレッサー能力
などを総合的に確認する必要があります。
ジェクターでは、吸引側を短くし、長距離部分を排出側に取ることが基本です。
条件が合えば、排出側で水平約200m、垂直約100m程度の搬送を検討できる場合があります。
「何mまで搬送できるか」だけではなく、
「何を、どれだけ、どこからどこまで運びたいのか」
を整理することで、現場に適した搬送設備を選びやすくなります。
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