この記事でわかること
- 農業施設で穀物が残留しやすい場所
- ピット・ホッパー・サイロなどから穀物を回収する方法
- 人力によるかき出し・運搬作業を減らす考え方
- ジェクターによる吸引・空気搬送の仕組み
- 低い場所から穀物を取り出す方法
- ホッパーでブリッジ・固結がある場合の注意点
- 回収先で必要になる空気処理
- 微粉・粉じんが多い場合のジェクロン活用方法
はじめに
米・麦などを扱う農業施設・穀物乾燥施設では、
- ピット
- ホッパー
- サイロ
- 乾燥機周辺
- 搬送設備下
などに穀物が残ることがあります。
こうした場所の中には、
「スコップが入りにくい」
「設備の奥まで手が届かない」
「床面より低い場所なので取り出しにくい」
といった、人力では回収しにくい場所もあります。
そこで検討できるのが、
人が材料の場所まで入って回収するのではなく、吸引ホースを材料まで延ばして回収する
という方法です。
空気搬送機「ジェクター」は、コンプレッサーから供給される圧縮空気を利用し、粉体・粒体などを吸引してホース・配管内を搬送します。
この記事では、農業施設・穀物乾燥施設のピット・ホッパー・サイロなどに残った穀物を、ジェクターで吸引・搬送する方法について解説します。
実際のジェクターによる粒状物の吸引・搬送
タンカー船内|PKS(ヤシ殻)回収・搬送作業
→ 船倉内に残った粒状物をジェクターで吸引し、ホースを通して搬送している実際の作業事例です。
※動画は農業施設での事例ではありませんが、広い空間や底部などに残った粒状物へ吸引ホースを持っていき、離れた場所まで搬送するジェクターの基本的な使用方法をご確認いただけます。
空気搬送機「ジェクター」は、お手持ちのコンプレッサー(圧縮空気)と接続するだけで、吸引・搬送・投入・排出(散布)を1台で行える空気搬送機です。
内部はシンプルなストレート構造で、モーターや回転機構などの駆動部を持ちません。
農業施設には「穀物を取り出しにくい場所」がある
農業施設では、大量の穀物をさまざまな設備で取り扱います。
通常運転では設備から次の工程へ排出できても、作業終了後などに材料が残る場合があります。
例えば、
ホッパーから大部分は排出できたが、底部や隅に穀物が残っている
というケースです。
この残留物を最後に人力で回収している現場もあります。
穀物が残留しやすい場所
例えば、
- 原料受入ピット
- ホッパー底部
- サイロ周辺
- 乾燥設備
- 搬送設備下
- 設備と壁の間
- 段差部分
- 設備内部
などです。
こうした場所では、通常の搬送設備だけでは最後まで材料を取り切れない場合があります。
課題1.ピットからの穀物回収
原料受入などで使用されるピットは、床面より低い位置にあります。
残った穀物を人力で回収する場合、
穀物を集める
↓
容器へ入れる
↓
上まで持ち上げる
↓
別の場所へ運ぶ
といった作業が必要になる場合があります。
低い場所から材料を取り出すため、通常の床面清掃とは異なる負担があります。
吸引ホースをピット側へ延ばす
ジェクターでは、
ピット内の穀物
↓
吸引ホース
↓
ジェクター
↓
排出ホース
↓
回収先
という構成を検討できます。
つまり、
穀物を容器へ入れて持ち上げる
のではなく、
ホース内を通して搬送する
という考え方です。
ジェクター本体までピットへ入れる必要はない
空気搬送では、材料がある場所へ大型設備そのものを持ち込む必要はありません。
ジェクター本体を作業しやすい場所へ設置し、
吸引ホースだけを材料まで延ばす
ことができます。
設備配置や安全条件によっては、人が作業しにくい場所からの回収作業を省力化できる可能性があります。
課題2.ホッパー底部に残った穀物
ホッパーは重力によって材料を排出します。
しかし材料の状態やホッパー形状などによっては、内部に穀物が残る場合があります。
例えば、
- 隅に材料が残る
- 壁面付近に残る
- 排出口周辺に残る
といったケースです。
こうした残留物を人力でかき出している場合、吸引回収を検討できます。
ホッパー排出口から直接接続できる場合もある
設備構造によっては、
ホッパー排出口
↓
ジェクター
↓
搬送ホース
↓
回収先
という構成を検討できる場合があります。
ジェクターは、
- フランジ
- ニップル
- ボールジョイント
- 各種継手
などを利用して既存設備へ接続できる場合があります。
そのため、必ずしも作業員が吸引ホースを操作する方法だけではありません。
ホッパーのブリッジには注意が必要
粉体・粒体を扱うホッパーでは、
ブリッジ
が発生することがあります。
ブリッジとは、材料同士がアーチ状につながるなどして、排出口上部で材料が止まってしまう状態です。
この状態では、
排出口が開いているのに材料が落ちてこない
ことがあります。
ジェクターを接続すればブリッジが必ず解消するわけではない
ここは設備検討時に重要なポイントです。
ジェクターは材料を吸引・搬送する設備ですが、
ホッパー内部で強固にブリッジしている材料そのものを崩す装置ではありません。
そのため、
材料が排出口まで正常に落ちてくるか
を確認する必要があります。
ブリッジが頻繁に発生する場合には、ホッパー側の対策も含めて設備を検討します。
課題3.サイロ周辺・底部の残留物回収
サイロなどの貯蔵設備でも、運用後に材料が残る場合があります。
特に、
設備から通常排出できる材料
と、
最後に残る少量の材料
では、適した回収方法が異なる場合があります。
大量の穀物は既存設備で排出し、
最後に残った材料だけジェクターで回収する
という使い分けも検討できます。
「最後の数%」の回収を省力化する
設備改善では、通常運転中の大量搬送だけを見る必要はありません。
例えば、
全体の95%は既存設備で排出できる
ものの、
残り5%を毎回人が清掃している
とします。
この最後の回収に時間がかかっているのであれば、
残留物回収だけ機械化する
ことにも意味があります。
課題4.設備と壁の間などの狭い場所
農業施設には、
設備と壁の間
配管の下
機械の奥
など、ほうきやスコップを操作しにくい場所があります。
こうした場所へ穀物が入り込むと、
手前までかき出す
↓
集める
↓
スコップで回収する
といった作業が必要になります。
ホースなら狭い場所まで届く場合がある
大型の回収設備は入らなくても、吸引ホースであれば材料の近くまで通せる場合があります。
そのため、
人が入り込む
のではなく、
ホースを入れる
という考え方で回収作業を検討できます。
ジェクターによる清掃・回収用途では、このホースの取り回しやすさが重要になります。
吸引側はできるだけ短くする
ジェクターでは、
吸引側をできるだけ短くし、長距離部分を排出側へ取る
構成を推奨しています。
吸引側は5m程度を推奨しています。
現場条件によっては10m前後で使用される場合もありますが、吸引側が長くなるほど搬送条件は厳しくなります。
「遠くから吸う」より「近くから送る」
例えば、ピットから30m離れた場所へ穀物を搬送するとします。
基本的には、
30m先にジェクターを置いて吸引する
のではなく、
ピット付近へジェクターを設置
↓
吸引側を短くする
↓
排出側で30m搬送する
という構成を検討します。
ジェクターの設置場所は搬送能力を考えるうえで重要です。
低い場所から高い場所へ搬送する場合
ピットから回収する場合、
低い位置
↓
床面
↓
さらに離れた回収先
という高低差が発生します。
ジェクターでは条件によって、排出側で水平約200m程度、高低差では垂直約100m程度の搬送を検討できる場合があります。
ただし、これらはすべての材料・現場で保証される数値ではありません。
実際の搬送能力は、
- 穀物の種類
- 粒径
- かさ密度
- 水分
- 搬送距離
- 高低差
- ホース径
- 曲がり
- 必要搬送量
- コンプレッサー能力
などによって変化します。
乾燥前の穀物では水分を確認する
穀物乾燥施設では、乾燥前の米・麦を扱うことがあります。
乾燥前と乾燥後では水分状態が異なるため、
などが変化する可能性があります。
特にホッパー・ピット内で材料が固まりやすい場合には、実際の状態を確認する必要があります。
固結した材料はそのまま吸引できるとは限らない
ジェクター内部はストレート構造ですが、
大きく固結した材料をそのまま吸引できる
という意味ではありません。
例えば、穀物や微粉が水分などによって大きな塊になっている場合には、吸引口やホース径より大きな塊が入らない可能性があります。
その場合には、
固結物を崩す
↓
吸引可能な状態にする
↓
ジェクターで回収する
といった方法を検討します。
サイロ・ホッパー内へ人が入る作業では安全管理が最優先
サイロ・ホッパー・ピットなどは、設備や現場条件によって重大な危険を伴う場合があります。
そのため、ジェクターを使用するかどうかにかかわらず、
- 設備停止
- ロックアウトなどの誤作動防止
- 酸欠等への対策
- 墜落・転落防止
- 粉じん対策
- 現場の作業手順
など、施設ごとの安全基準に従う必要があります。
ジェクターは、こうした安全管理を代替する設備ではありません。
「人が入らなくて済む作業」を探す
一方で、設備改善を考える際には、
そもそも人が内部へ入らなくても回収できないか
を検討することが重要です。
例えば、
開口部から吸引ホースを入れて回収できる
のであれば、設備内部へ人が入って材料を運び出す作業を減らせる可能性があります。
実際に可能かどうかは設備構造・残留状態などを確認して判断します。
回収先では搬送空気の処理が必要
ジェクターでは、材料だけが排出されるわけではありません。
材料+搬送空気
が排出されます。
そのため、
ピットから吸引できたから、そのまま密閉容器へ送ればよい
とは限りません。
フレコンへ排出する場合も空気処理を考える
例えばフレコンへ大量の搬送空気と一緒に材料を送り込むと、内部で空気が暴れたり、微粉が飛散したりする可能性があります。
そのため、
- 排気
- 集粉
- フィルター
- 回収設備
などを含めて排出先を検討します。
特に微粉が多い材料では重要なポイントです。
微粉・粉じんが多い場合はジェクロン
ピットやホッパーの底部には、
穀物
+
細かな破片
+
粉じん
などが一緒に残っている場合があります。
こうした材料を回収するときには、集粉機「ジェクロン」と組み合わせる方法を検討できます。
ジェクター+ジェクロンによる回収
例えば、
ピット・ホッパーなどの残留物
↓
ジェクターで吸引
↓
ホースで搬送
↓
ジェクロンで集粉
↓
フレコンなどへ回収
という構成です。
ジェクロンはサイクロン方式の粉体回収設備で、
- 高性能集じんフィルター
- インバーターによる風量調整
- パルスエアーによる自動逆洗
などの機能があります。
材料の状態や回収先によって、ジェクター単体かジェクロンを組み合わせるかを検討します。
穀物由来の粉じんにも注意する
ピット・サイロ・ホッパーなどでは、穀物そのものだけでなく微粉が堆積している場合があります。
穀物由来の可燃性粉じんについては、条件によって粉じん爆発などの危険が生じる可能性があります。
そのため、
- 対象物
- 粉じんの性状
- 粉じん濃度
- 着火源
- 設備仕様
- 使用環境
などを確認し、施設の安全基準に従って設備を検討する必要があります。
製品として戻す場合は品質・衛生基準も確認する
ピットや設備周辺から回収した穀物について、
そのまま製品ラインへ戻せるか
は搬送設備だけでは判断できません。
- 回収場所
- 異物混入
- 衛生状態
- 施設の品質管理基準
などを踏まえて判断する必要があります。
ジェクターによって回収できることと、その穀物を再利用できることは別の問題として考えます。
既存コンプレッサーを利用できる場合がある
ジェクターは圧縮空気を動力として使用します。
施設内にコンプレッサーがある場合には、必要な圧力・空気量を確保できれば既存設備を利用できる可能性があります。
確認するのは、
- メーカー
- 型式
- 出力
- 使用圧力
- 吐出空気量
- 他設備との共用状況
などです。
型式が分からない場合には、コンプレッサーの銘板写真から確認できる場合もあります。
現場写真が設備選定に役立つ
ピット・ホッパー・サイロなどの回収では、設備形状が現場によって大きく異なります。
そのため、
- 設備全体
- 材料が残っている場所
- 開口部
- 排出口
- ジェクターを置けそうな場所
- 回収先
- 周辺設備
などの写真があると初期検討を進めやすくなります。
可能であれば、現在どのように回収しているか分かる動画も有効です。
搬送テストで実際の穀物を確認する
対象物によっては、実際の穀物を使用して搬送テストを行います。
確認するのは、
- 安定して吸引できるか
- 必要な回収能力が出るか
- ホース内で詰まらないか
- 水分の影響
- 割れ・欠け
- 粉化
- 適した機種
- 必要なコンプレッサー
などです。
特に乾燥前の穀物や、微粉・異物などが混ざった残留物では、実際の状態に近い材料で確認することが重要です。
こんな作業ならジェクターを検討できる
例えば、
ピットの底に残った米・麦を人力で取り出している
ホッパー底部の残留物を毎回かき出している
設備と壁の隙間へ入った穀物を回収している
通常排出後に残る材料の清掃に時間がかかる
残留物をバケツへ入れて持ち上げている
回収した材料をさらに離れた場所まで運んでいる
といった作業があれば、ジェクターによる吸引・搬送を検討できる可能性があります。
よくある質問
ピットの底から穀物を吸引できますか?
対象物、深さ、吸引距離、必要回収量などによって異なります。
ジェクターは吸引側を短くする構成を基本とし、現場条件を確認して設備を検討します。
ホッパーへ直接ジェクターを接続できますか?
設備構造によっては、フランジや各種継手などを利用して接続できる場合があります。
排出口寸法や材料の供給状態を確認する必要があります。
ブリッジした穀物も吸引できますか?
ジェクターはブリッジそのものを崩す装置ではありません。
材料が排出口まで供給されない場合には、ホッパー側のブリッジ対策も含めて検討する必要があります。
サイロ内部の清掃にも使えますか?
設備構造や残留物の状態によって、吸引ホースによる回収を検討できる場合があります。
ただし、サイロなどへの立ち入りが必要な作業では、施設の安全管理・作業手順を最優先してください。
粉じんも一緒に回収できますか?
微粉を含む場合には、ジェクターと集粉機「ジェクロン」を組み合わせた回収方法を検討できます。
まとめ
農業施設・穀物乾燥施設では、
- ピット
- ホッパー
- サイロ
- 設備下
- 機械と壁の間
など、人力では穀物を回収しにくい場所があります。
こうした場所では、
人が材料まで行く
↓
スコップなどで回収する
↓
容器へ入れる
↓
人力で運び出す
のではなく、
吸引ホースを材料まで延ばす
↓
ジェクターで吸引する
↓
ホース内を搬送する
↓
回収先へ排出する
という方法を検討できます。
空気搬送機「ジェクター」は、お手持ちのコンプレッサー(圧縮空気)と接続するだけで、吸引・搬送・投入・排出(散布)を1台で行える空気搬送機です。
内部はシンプルなストレート構造で駆動部を持ちません。
また、穀物と一緒に微粉・粉じんを回収する場合には、集粉機「ジェクロン」と組み合わせた設備構成も検討できます。
農業施設・穀物乾燥施設で、
「ピットの残留物回収に時間がかかっている」
「ホッパーの最後の材料を人力でかき出している」
「人が作業しにくい場所から穀物を取り出したい」
といった課題がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
対象物、残留状態、設備形状、吸引場所、排出場所、搬送距離、高低差、必要回収量、コンプレッサー、現場写真などを確認し、必要に応じて現地調査や搬送テストを行いながら、現場に適した機種・ホース構成・回収方法をご提案します。
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